お食事前の方は読まないでください

某日、味噌汁の具にと用意した足つきナメコの容器の縁に、
明らかにナメコとは別の形状の曲者発見。
色は肌色。
長さはナメコの足くらいだが、真ん中がぷっくりと膨れている。
両端は細く、どこが頭なのか足なのかもわからない。
それが、うねうねと怪しく動く。
ああ、これは、認めたくはないが、明らかに舐め鯨角なしタイプだ。
（本名は書きたくない。）
以前、マイタケの破片をがそいつに見えて
肝を冷やしたことがあるが、今回は本物だ。
急いでティッシュでつまみあげ…ようとしたが、敵もさるもの、
そうやすやすとはつかまる気はないらしく、激しい抵抗を見せた。
持ち前の粘着力を遺憾なく発揮し、容器にぴったりへばりついて離れない。
どころか、意外に逃げ足も早く（どこまでが足かわからないが）、
いつの間にか別の場所へ移動している始末。
このまま見逃してなるものかと、ティシュを持つ手に力を込め
（ただし、あまりリアルに感触感じたくないので、適度な込め具合にとどめ）、
どうにか捕獲。
ティシュの中にしっかり収めると、小さく丸め、さらにスーパーのチラシで包み、
それをビニール袋に入れ、口を結んで一安心しようとしたら、袋に穴が空いているのに気づき、
あわててガムテープでふさぎ、ようやくゴミ箱に入れて、一頭処分完了。
ヤレヤレ。たいした大捕物だ。（ため息）

舐め鯨と言えば、大昔に読んだ楳図かずお先生のギャグ漫画を思い出す。
一人の美男子を巡り、美少女二人がどちらが相手にふさわしいか競い合うという場面。
精神的な強さを測る対決で、用いられた道具が二頭の舐め鯨。
それらを各々一頭ずつ腕に這わせ、平気でいられるかどうかを確かめるというもの。
動揺していれば、腕に汗をかく。
汗をかけば、その塩分で舐め鯨は溶ける。
溶けたほうの負け。
という世にも恐ろしい決闘だ。
美少女が苦悶の表情を浮かべるシーンが未だに目に焼きついている。

それにしても楳図先生のギャグセンスは秀逸だと今更ながら思う。
舐め鯨を腕に這わせるという身の毛もよだつ拷問も、
第三者（フィクションだとわかっている読者）からすれば完全なる喜劇だ。
恐怖を裏返すと笑いに変わる。
それも爆発的な。
元の恐怖が大きければ大きいほど、転換した笑いも大きくなる。
恐怖漫画とギャグ漫画、両極のジャンルの第一人者でいらっしゃる
楳図先生は偉大だとつくづく思った午後だった。